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読了した本の感想です

感想・約束の果て 黒と紫の国(高丘哲次)

 

約束の果て: 黒と紫の国

約束の果て: 黒と紫の国

  • 作者:高丘哲次
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

中国を思わせる「伍州」に伝わる、「南朱列国演義」と「歴世神王拾記」という二つの書。それは二つのボーイ・ミーツ・ガールの物語でもある。二つの物語がやがて一つに収束する、という筋書きは冒頭から暗示されている。読者は二つの書を交互に読み解きながら、共通する固有名詞や関連性がある人物たちに少しずつ気付き、やがてその意味に至る。

 古代中国+ファンタジーの壮大な世界観、数字のインフレーションが甚だしい戦の描写。二つの書は進行につれて荒唐無稽さを増していき、冒頭からこのスケールを示されると戸惑うと思う。だが、それぞれのボーイ・ミーツ・ガールを起点に置くことで、読者を物語世界に誘うことに成功しているように見える。

たどり着く結末は美しく力強い。著者の「物語」に対する壮大なラブレターのように感じられる長編。